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2016.03.14

住宅ローンは「損・得」よりも「リスク」を考える。

資金計画

住宅ローンに関する3つのキーワード

住宅の購入のため、住宅ローンを組むとき、みなさんはどんな返済計画を立てますか?

(1)頭金をしっかり積んでおこう
(2)頑張って繰り上げ返済をどんどんしていこう
(3)60歳で定年退職だから、それまでに完済できるよう、返済期間を短く組もう!

実際、このような考え方をしている方は多いようです。しかし、生活のことを考えると、これは決して安全な考え方ではありません。私は資金計画セミナーの参加者には、こうおすすめしています。

(1)頭金は使わなくていい
(2)繰り上げ返済はしない
(3)最長の住宅ローンを組もう

今回は、この3つの大切なキーワードについて考えてみたいと思います。

住宅ローンに対する危険な考え方
(1)頭金をしっかり積む
(2)繰り上げ返済をする
(3)短い返済期間でローンを組む

これは「損」か「得か」でいえば、確かに得をする住宅ローンの組み方、返し方です。でも、住宅ローンだけでなく、生活全般を視野に入れて、よく考えてみましょう。

(1)頭金を積むということは、手元にまとまったお金が残らないということです。
(2)繰り上げ返済をするということは、手元のお金が住宅ローンの返済に持っていかれてしまうということです。
(3)「短い返済期間でローンを組む」

ということは、長い返済期間でローンを組んだときより、月々の返済金額が高くなるということです。
では、その逆を考えてみましょう。

「暮らし」と「リスク」を優先して住宅ローンを考える

(1)頭金は使わなくていい
頭金を積まなければ、当然返済する金額は増えます。しかし、手元にまとまったお金が残せるというメリットもあります。

※ただし、住宅の購入にあたっては、住宅ローンを借りる手数料や保証料、火災保険、生命保険、土地や住宅の登記費用とそれに伴う土地家屋調査士、司法書士への報酬など、住宅ローンの借り入れ金額に含めることができない必要最低限な必要経費が発生します。
住宅の購入を考えている方は、家づくりを始める前にご用意ください。必要な金額は購入する住宅の価格によって異なりますが、概ね住宅総価格の5%程度が目安です。2000万円の住宅なら100万円、2500万円の住宅なら125万円程度は確保しておきましょう。

(2)繰り上げ返済はしない
繰り上げ返済とは、返済期間の途中で、決められた月々の返済額とは別に、前倒しして返済を行うこと。
まとまった金額ができたから、繰り上げ返済をしたいという声をよく聞きます。確かにまとまった金額を返済すれば、ローン残高が少なくなり、利息も減ります。

その結果、来月からの返済額が以前よりも1万円以上少なくなるなら、繰り上げ返済をした効果が感じられるでしょうが、実際はかなりの金額を繰り上げない限り、月々の返済額はそう大きく変わりません。

大きく変わるのは手元の残高だけ。家族の怪我や病気、住宅の補修や回収など、万が一にも備えられないばかりか、生活が苦しくなることさえあります。
繰り上げ返済する分を、万が一の備えや家族の楽しみのために使ったほうが、暮らしや人生が豊かになるような気がしませんか?

また、住宅ローンの借り換えには手数料がかかります。借り換えを検討している方は、長期的な返済計画を立てた上で慎重に検討してください。少しでも残高を減らしたい気持ちは分かりますが、目先の金利にとらわれて借り換えをし続けていくと、手数料ばかりがかかって、「引っ越し貧乏」と同じになってしまいます。

(3)最長の住宅ローンを組もう
返済期間を短くすれば、当然金利が低くなります。もちろん、返済金額全体を考えると「得」にはなります。しかし、月々の生活費のことを考えてみましょう。

例えば、総返済額を少しでも減らすため、月々10万円の返済金額で25年のローンを組んだとします。
その10万円は、月々の収入から捻出できるギリギリの金額だとします。
それを全て住宅ローンの返済にあてた場合、万が一に備える貯蓄も、家族の楽しみのための余裕も何もなくなってしまいますよね。
しかし、返済期間を最長で組んで、返済金額を月々8万円にした場合は、月々2万円の余裕をつくることができ、それを貯蓄や家族の楽しみにまわすことができるのです。
何度かお話していますが、家族の幸せのために必要なお金は住宅ローンだけではありません。お子さんを大学に進学させた場合の教育費は一人あたり4年間で、国公立の自宅通学が約400万円、自宅外通学が約660万円といわれています。
私立の場合はもっと多額のお金が必要になります。そのほか、車も定期的に買い替えなくてはなりません。

「頭金は使わなくていい」「繰り上げ返済をしない」そして、「最長の住宅ローンを組む」。
それが「暮らし」と「リスク」を一番に考えた住宅ローンの考え方だと私は思います。

住宅ローンの支払いは、自分の家に対する投資

ほとんどの方が、少しでも早く住宅ローンを返済したいと思っています。年齢が高い方ほど、その傾向にあるようです。その理由は、頭のどこかに「住宅ローン=借金」「借金=危険でよくないこと」という考えがあるからだと思います。でも、私は「住宅ローンを支払うことは、自分の家に投資すること」だと思っています。

日本ではまだ一般的ではありませんが、欧米では、すでに保有している住宅を担保に、金融機関などから毎月一定額の融資を受ける「リバースモーゲージ」というしくみが普及しています。
融資を受けても返済する必要はありません。借り入れ者が死亡した場合、金融機関などが住宅を処分して返済金額にあてるからです。このしくみは今後、日本でも普及するのではないでしょうか。

私は家を建てる方には、必ず長期優良住宅をおすすめしています。国が定めた一定の住宅性能をクリアしたと認定された家です。そうした住宅なら、金融機関も高く査定し、融資額も多くなるでしょう。また、もし、家を手放さざるを得なくなっても、高い金額で売却でき、買い手も多数現れるでしょう。

最後に。家は住宅ローンを支払うために建てるものではありません。家族の幸せと安全のために建てるものです。家を建てたのはいいけれど、住宅ローンの返済のために汲々としてしまっては、果たして幸せといえるでしょうか?
これから住宅の購入を考える方には、ローンの残高や現在の金利よりも、「家族の幸せと安全」を一番に考えていただきたいと思います。

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